vol 999 「正義」

「美容師になったきっかけ・・・」

 

 

実は今のGARDENのスタッフ達のような、そんな大きな夢が最初からあったわけでもなく、社会に出る意味も目的もなく就職し、サラリーマン社会の現実と将来に自分が重ねられなくなり、何かを求めて辿りついたのがたまたま美容師という道。

 

 

「苦労したことは?」

これも良く聞かれる事で、自分の中でいつ?何が?苦労で、何が失敗したこと?かは、実はあまり解っていない。それが楽天的であるのか、前向きなポジティブさからくるのか・・・

 

 

それでもアシスタント時代はそれ相応に、僅か数万円という給料で、まともな生活も出来ないような時代も過ごし、それでもなぜか「自分で決めた」というこの職業にしがみつき、ただただ家族や友人達に、「いいお店で働いてるね!」と言ってほしくて、お客様に喜んで頂けることが何より最高に嬉しくて頑張っていた。

 

 

何度も逃げ出そうと思いながらも、なんとかスタイリストとなり、人生を変えられる先輩とも出会い、不器用で何の取り柄も無かった自分が、いつの間にか環境に感化され、この美容師という職業に大きな目標とやりがいを見出すようになっていった。

 

 

「しいて辛かった事?」

と言えば、お金や先輩からの屈辱や、上手くいかない自分のジレンマよりも、20代半ばから後半にかけて、自分が美容を通して「何がしたいか?」が見えにくくなっていた時があり、その頃は何かにすがるように今以上に本も読んだ。

 

 

自分の成長と組織の成長と、それを取り巻くカリスマ美容師ブームというく大きな時代の変化。

 

 

がむしゃらに寝る時間もなく美容にのめり込み、全国のどんな美容師よりも働いてるという実感を持ちながらも、常にどこかで地に足がついてない自分がいて、それは自分の中で「何のために?誰のために?」という答えが解らなくなっていた。

 

 

でもある時ふとその答えが、「自分だけの為じゃない・・・」と解った瞬間から、美容師、この美容業という仕事に人生を賭ける価値がはっきりとわかり、それ以来は自分の中で苦悩することはほとんどなくなっていった。

 

 

それでも無免許問題の時のマスコミからのバッシングや、それに連動した恐喝事件など、訴訟、裁判といった普段の美容師では全く関わりのないこと、また自分の人生を変えてくれた、大恩のある先輩達との縁をも切ってしまったりと、いつか本に書けそうな数々の経験もし、それでもこのGARDENをオープンして、約7年半という経過を経て今もなお、成長し続ける組織を率いる事が出来ている。

 

 

ある方が、「企業の根幹に正義があるか?」

これがその企業が存在する価値の問題で、栄枯盛衰が当たり前な企業競争の生き残りのなかで、「利益」だけを生み出しても、その価値に「正義」という大義名分があって、最後は企業という人格の「信頼」がその企業を支えるのだと。

 

 

僕がこのGARDENで実現したいことは、実はとてもシンプルな事で、

「スタッフ一人一人が幸せになる事」。

 

 

そのためには「アジアのリーディングカンパニー」という、とてつもなく高い山を目指し続け、「お客様に最高峰のデザインとサービスを提供する」という、プロセスと結果を永遠に追い続けて行かなければならないという事。

 

 

以前その目的に苦悩していた頃、よく田園風景で働く農家の人を見て、「食」という生きる事の根源や、インフラ整備や生活向上のための「人の為に働く」という仕事に対して、自分たちがやっている美容という職業に、それだけの価値を見いだせない自分がいた。

 

 

でも今ははっきりと、これから益々物理的には豊かになっていく時代において、手作業で、フェイストゥーフェイスで、相手を思いやる心があるからこそ成り立つこの美容師という職業は、今後ある意味世の中の最先端を担い、様々な他業種にも影響を与え。

 

 

またその最たる才能を、世界中のどの国よりも潜在的に継承してきた、この日本人というアイデンティティーにおいて、世界をリードしうる可能性を大いに秘めた、素晴らしい職業であると信じてやまない。

 

 

どんな小さなことでも、どんな職業であっても、その「仕事」に対してどんな想いを持ち、どんな大きな夢を持ち、どれだけ自分の人生を賭けられるか?

 

 

それがすべての世界における「一流」という事の所以であるだろうし、新しいものばかりに目が奪われ、土台もなく安易に成功する例ばかりを追いかける現在の風潮において、同じことを深く真摯に継続できるからこそそこから新たな何かが生まれ、変化し進化する必要性と危機感を持つからこそイノベーションを繰り返し続ける。

 

 

本来歴史を創ってきた主役たちは、いつもその継続して培われた土台の上に立ち、深く考え続けた中に見える数ミリ程度光の中から、新しい未来を創造してきたのだと思っている。

 

 

人生においては、想像も出来ない不遇や不幸もあり、多種多様な価値観の中で、「理想論」を掲げたところで、人は全て善でもなく、一人一人がそんなに強いわけでもなく、生きていく事に喜びが見出せない人達が、今この瞬間にもどこかに沢山いるのだとも思う。

 

 

それでも自分たちは、本当に僅かな可能性の中で「生」を受け、両親や周囲からも無償の愛を受け、少なくと自分は健康的にも何不自由ない五体満足な体を授かっている。

 

 

何もわからず何の才能もなく、そんな大きな夢や希望もなかった自分が、苦しくても何かにしがみつき、逃げ出したくても継続してきて、ちょっとした楽しさや自信が生れたことで少し景色が変わり。

 

 

苦しみを経て楽しくなることで、それが周囲にも影響を与え、いつの日か何もできない、何の力も無かった自分が、人前で夢を語り、大きな志を持ち、気がつけば、その夢を自分の「使命」とまで思い込み、自分の人生を賭ける事までとなり。

 

そうやって新しい時代を切り開き、新たなものを創造して行くのだと思う。

 

 

だからこそ自分は、全てのスタッフにその可能性を信じて欲しいと思うし、美容師の無限の可能性を信じて欲しいと思っている。

 

 

それは誰にでも可能性がある事で、そういう人達に感化され、そんな生き方を真近で見る事で、元気や勇気が湧き、そんなエネルギーを与え合いながら、少しずつ人は「強く」「優しく」成長し、本当の意味の自由を手に入れるんだと思う。

 

 

そんな人、そんな組織を創り、お客様やこの業界のみならず、沢山の人達に影響を与えていく事が、自分にとって、GARDENの存在する「正義」だと思う。

 

 

スポーツの世界でも何の世界でも、「日本代表」の使命とは、「勝って夢を与える事」だと思っている。

 

 

僕らの目指すGARDENも、常に後ろは振り向かず、一人一人のスタッフが成長し、豊かに幸せになりながらも、そんな夢を実現し続け、勇気を与え続ける集団でありたいと思う。