我々の業界は、ファッションやクリエイティブという側面からすると、よく「ファッション業界」と比較されます。
コレクションや、シーズンのファッションに影響される事を考えれば、ファッションの動向は、美容師としてはとても大切な情報ソースの一つですが、我々経営に携わる者からすると、どちらかと言えば「飲食業界」の方が、その動向や展開、若い経営者の方達の活躍に影響を受けます。
根本的な構造が違っているとは言っても、「料理人」という「技術者」という視点からの発想と、「経営者」という側面からの発想。
時には相反してしまうその両面のバランスのとり方、その『バランス感覚』、様々な、「業態」が存在して、様々な発想でパワフルにやっていらっしゃる。
中谷彰宏さんの著書で「ホテル王」と「レストラン王」という本があるんですが、その中でも、「サービスマン」として、「料理人」として、また「経営者」として、素晴らしい「カリスマ」たちがそれぞれの角度から紹介されています。
とてもお気に入りの一つで、フロントスタッフ全員にはプレゼントしたほどですが、いつか中谷さんに、「美容王」というのを出して欲しいと思っています。(笑)
「人」というキーワードは一緒でも、我々の場合は365日3度食べるものではないので、「気軽に」来店頂けるものではありませんし、商業ビルに入ったからといって、簡単に集客できるものではありません。
あくまでも、お客様に『顧客』になって頂いて、はじめて経営が成り立ちます。
ですから「立地」とか「便宜性」も大切ですが、それ以上にお客様を惹きつけるだけの「ソフトの魅力」が必要です。
この業界で株式上場をしているところは、2つしかありません。上場がいいのかどうなのか?まだ今の我々にはわかりません。が、資金があれば確かに出店は簡単です。
でもこれからの時代に、消費者の方たちが、ただの多店舗展開したもの、コストを抑えて同じように創られた空間、コンセプトや特徴がはっきりしないある意味「マクドナルド」のような空間、美容室にそれを求めるんでしょうか・・・?
様々な業界で「M&A」みたいなことが起こり、二極化されていくものを消費者が選択していく。
「安く、早く、いつでも、簡単に」っていうニーズも確かにあるでしょう、ただそこには、「クオリティー」は絶対に伴わない、なぜなら「人」が育ちません。
美容師が成長する一番の動機付けは、自分の働いている店への「愛着」や「プライド」だからです。
我々は、今も美容師を現役でやっているから判ります、「美容師の気持ち」が・・・
フランチャイズが進化して、のれん分け制度とか、仕組みを作ることは簡単です。
ただ大事なその「ソフト」の部分は簡単には作れません。
美容師としての「オリジナリティー」を確立して、多くのお客様に支持されること、また経営者として「自立」できるようなリーダーになっていくこと、またそれ以上にその「個性」の違う者どうしが、心の底から「信頼」し合うこと、それには絶対的な時間がどうしても必要です。