vol 977 この業界の矛盾

今回も充実したNYでした!

 

 

NYの美容事情は、日本より個人レベルでの競争原理が働いていて、ご存じのように、ミッドタウンのようなハイエンドな顧客層を相手にするのであれば、それだけ競争は激しく、数年前まではまさに表参道界隈以上に世界中からスタイリストが集まり、教育システムなどない中から、競争で勝ち残ったものだけがスタイリストと成り得る仕組みだった。

 

 

その分日本人でもフェッカイのセージさんや、ウォーレンのハマさんナルさんなど、高いギャランティーを取りながら、コレクションのヘアメークなどもし、十分なバケーションも取れるような、いわばアメリカンドリームもあった。

 

 

またダウンタウンでも、実力さえあればそれなりのギャランティーも確保でき、自分のペースに合わせたフリーランス的な仕事をするのが一般的で、もちろん日本人の場合ビザという大きな問題はあるけど、日本で言えばいわゆる「面貸し」的な考え方がスタンダード。

 

 

但し、日本のように美容室が過剰な状況ではなく、あくまで個人レベルでの競争は激しいけど、サロンという企業レベルで言えば日本の方が数段激しい競争にさらされていると思う。

 

 

そんな状況の中、ここ最近過ごしずつ変化も見られるらしく、実際にミットタウンを支えるアッパー層も高年齢化し、デザインにも変化が生まれ、また以前のような競争主義ではスタイリストが続かず、数年で独立したり、それこそ日本からくる日系のサロンのクオリティーも上がって来て、例えばウォーレンなんかでもスタイリストデビューを早めたり、ダウンタウンにジュニアサロンを作ったり、伸び悩んでるスタイリストにも、サロンワーク以外の仕事でケアをしたりと、いわゆる人を育てる企業化も進んでいるともいう。

 

 

自分が思うに、NYは所得層の差はこれからもあり続けるのだろうけど、年齢層の変化によるデザインやサービスに対するニーズの変化、店舗が過剰化する事によるスタッフの確保の問題やそれに伴う教育の問題など、個人主義がベースにあった時代から、少しずつ日本や他業界のように企業化的な方向に進むのではないかと・・・

 

 

逆に日本は年々美容学生が減少し、今のアシスタント制度を継続して行くためには美容学生の確保が重要だけど、今現在でも地方では数十名しかいない状況であれば、大手の条件がいいところでそれを確保してしまえばそこが勝ち組で、それ以外はやはり面貸し的な発想でしか、サロンは運営できなくなるはず。

 

 

でもそうしないのであれば、単純に美容学生を増やし美容師人口を増やす為に、より魅力的な業界にしなきゃいけないんだけど、それだと当然更に競争は激化し、人口減のこの国の状況からして価値を生み出すか、価格を破壊していくしかないはず。

多くのこの業界の人達が、「美容業界を良くするために、若い人たちがこの業界に魅力を感じてもらうようにする!」というんだけど、それはイコールそれだけ競争を激しくする事なんだけどね。

 

 

更に今の免許制度や美容学校2年生を考えると、それだけお金と時間をかけても奨学金という借金が永遠とつきまとい、就職と同時にそれを返済できるだけの収入が無い今の仕組みのでは、まともに考えて美容師になりたいと思う人がいなくなるのも当たり前で、美容学校という入り口と、サロン運営という出口の考え方が全く矛盾していて、美容学生はどんどん減り続けるんだろうと思う。

 

 

そうすると日本も数年後には面貸し的なフリーランスな美容業に変化して行くのも必然かもしれないけど、ただNYや海外と違って、ハイエンドな人達に向けた高客単価なサロンは無理だし、チップという制度もない分、殆どの美容師の収入はチープになり、それが淘汰となって、美容学校や免許制度も含めたこの業界が変化せざるをえない状況になっていくのかなぁってね?

 

 

企業化というのは平均化でもあり、個人競争というよりはチームとしての対外競争であり、逆に美容師という個を強くするためには個人競争であって、企業的な発想とは矛盾するんだけど、決定的なアメリカンドリーマーのような象徴がいる事でのモチベーションと、ある程度以上はそれなりになれるような、チームワーク的なモチベーションはそれこそ企業風土やその国の国策や国民性でもあるんだろうけど、どっちがいいんだろうね・・・

いずれにしろそこが明確な方が働くスタッフとしては、解りやすいのかもしれないし、この日本の矛盾した美容業界でどんな考え方でやっていくのかが問われるんだろうし、NYでどんなサロンを出店するかもその辺の考え方が重要でもあると思ってる。

 

 

まぁ、今回も色々勉強になりましたよ。(ゴルフの面でも)(笑)